個人で弁理士を用いず特許登録した体験記

第1世代過充電防止回路
第2世代過充電防止回路

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第1世代過充電防止回路

<発明>  発明の内容は、バッテリーの両端の電圧が一定以上になると、発光ダイオードに流れる電流が増大し、 その電流を電圧に変換したものによって、トランジスタがオフするというものです。 これは、過充電防止回路と呼ばれ、一般にチャージコントローラと呼ばれる機器の機能の一つです。  もともと会社で太陽電池を評価する仕事をしていて、勉強のために個人で太陽電池やバッテリーを購入していました。 車の中に同乗者が便利なように、補助バッテリーとして21Ah(アンペア・アワー)の鉛蓄電池を置いておいており、 電気が抜けていくのを補うために、10Wの太陽電池を接続していました。 しかし、過充電が心配でした。 チャージコントローラを使用すれば解決するのですが、チャージコントローラは自己消費電流が多く、 10Wの太陽電池を車内に設置する程度では、電力的に赤字になってしまします。 そのため、消費電流の低い、過充電防止回路がほしかったのです。 勉強のため、tinaという8万円程度の回路シミュレータを持っていたので、 思いついた回路をシミュレーションしてみて、動いたので、 実機で試作してみたところ、ちゃんと動きました。 しかも、消費電流は、3uA(マイクロアンペア)程度で、 これは市販のチャージコントローラを用いた場合より、3桁も少ないという素晴らしいものでした。

<特許明細書の作成>  発明を盗まれたりしては困ると、たった一回の土日を用いて、特許明細書を作成しました。 弁理士には依頼せず、自分ですべてやりました。 そのため、無駄な請求項がたくさんあるだろうと思います。 明細書は、無駄かもしれないのは承知の上で、なるべく細かく丁寧に書きました。 そして2010年4月頃、紙ベースで出願しました。 紙ベースで出願したので、電子化手数料を3万円程度とられてしまいました。 あまりにあわてて書いたので、完成度が低くなってしまい、 1か月後に、もっと詳細に書き、また2010年5月頃、紙で出願しました。 その際、国内優先にはせず、全く新しいものとして出願しました。 古い方は、後日取り下げました。 また電子化手数料を4万円程度とられてしまいました。  そこから約1年間で、合計3回補正しました。 補正で、誤記の訂正、説明の追加をしました。 しかし、説明の追加は後日、補正却下の対象となってしまいました。 この補正は、三重県津市高茶屋にある発明協会に行き、電子的に行いました。 最初の出願も紙ではなく電子的に行えば、電子化手数料を払わずに済んだので、 そうすればよかったです。 なお、場所は途中から三重県津市の県庁の近くに移転しました。 また、無料の先行技術調査を依頼し、先行技術は見つかりませんでした。

<審査請求と中間処理>  2011年12月20日、県庁の近くの発明協会で、審査請求をしました。 請求項は25あるので、審査請求料は21万8000円にもなりました。 この金額の特許為替を購入して、特許庁に送りました。  2012年5月頃、1回目の拒絶理由通知が来ました。 補正却下+新規性なし+進歩性なしという厳しいものでした。 自分の先行技術調査、依頼した先行技術調査では見つからなかった案件が見つかったのです。 補正却下に対しては戻し、新規性無に対しては、最初のいくつかの請求項を削除し、 進歩性無しに対しては、作動電圧を高める工夫の部分を請求項に追加する補正をし、 その補正部分を違いとして意見書でアピールしました。 補正書と意見書は電子的に行いました。 その際、「拒絶理由通知との対話 稲葉慶和氏著」が役に立ちました。 主な内容は、先行技術との違いに対する顕著な効果を主張せよというものです。  2012年7月頃、2回目の拒絶理由通知が来ました。 これが最後の拒絶理由通知とのことです。 内容は、自身の補正の不備による意味が理解できない+進歩性なしというものでした。 不備を補正し、意見書で謝るという内容で、 補正書と意見書は再び電子的に行いました。  2012年8月頃、特許査定が届きました。 1年目から5年目までの年金を予納台帳から支払う手続きをし、登録を待ちます。

<まとめ>  弁理士を使っていないにもかかわらずこの特許のために30万円も使ってしまいました。 また休暇を2.5日使ってしましました。 でも無事に登録の見込みになってよかったです。


第2世代過充電防止回路

<発明・出願1>  このようにうまくいった第1世代過充電防止回路ですが、欠点もあります。 それは、一度過充電と判定されると、自発的に発電側の電圧が下がるまで、充電をしません。 また、過充電判定電圧は大きな電流依存性を持ちます。 そのような欠点を改善するための方法はないかと、シミュレーションをして試行錯誤しました。 そして、第1世代過充電防止回路の後段に増幅段を用意し、 第1世代過充電防止回路はスイッチング素子より蓄電装置側に、 増幅段はスイッチング素子より発電装置側に接続し、 第1世代過充電防止回路の内部を工夫することによりヒステリシスを持たせる方法がよさそうだと考えました。 この回路は、一度過充電と判定され、発電側と蓄電側が切断されても蓄電側の電圧が下がると再び充電し、 過充電判定電圧は、蓄電池の内部抵抗を無視すると、電流依存性を持たないことがわかりました。 この過充電防止回路は、シミュレーション上、約16uAの消費電流でした。
 特許の個人出願には慣れていたので、また個人で弁理士を使わずに出願することにしました。 2013年5月頃、出願しました。 ICカードリーダーを購入し、出願ソフトを入れ、自宅のPCで出願しました。 そして、出願後1か月もかけて特許調査を行いましたが、先行技術は見つかりませんでした。

<発明・出願2>  しかし、この回路より消費電流を抑えられ、かつ動作の安定した回路を思いつきました。 新しい回路は、第1世代過充電防止回路で用いた基本判定回路2つとフリップフロップとして機能する回路を用いたものです。 同様に、一度過充電と判定され、発電側と蓄電側が切断されても蓄電側の電圧が下がると再び充電し、 過充電判定電圧は、蓄電池の内部抵抗を無視すると、電流依存性を持ちません。 さらに、動作は安定し、シミュレーション上の消費電流は10uAでした。 これが第2世代過充電防止回路です。
 新しい回路を出願するに当たり、追加部分だけ新出願日と扱われる国内優先も検討しましたが、 全面的に変更になることから別出願とし、前出願は公開前に取り下げることにしました。 2013年9月14日、自宅から新たに出願しました。

<審査請求と中間処理>  2013年10月、審査請求しました。 この少し前に、日本国特許庁が請求料を値下げしていました。 そのため、請求項16個で18万2000円で、審査請求ができました。 もちろん個人出願であるという理由で、早期審査を請求しました。 審査請求も自宅のPCからできます。 この少し前に、三重県から関東に引っ越していて、住所の変更手続きもしています。
 2013年12月、36条違反(意味不明)を理由に拒絶理由通知を受け取りました。 用語の不統一、勘違いによる請求項のあいまいさが指摘理由と書かれていました。 この点を修正し、補正書、意見書を提出しました。
 2014年2月、無事に特許査定が届きました。 これで一安心です。 3年分の登録料を支払いました。 2014年3月14付で、特許証が届きました。 出願からちょうど6か月の日でした。

<まとめ>  第2世代過充電防止回路は、20万円の費用で、また休暇を全く用いずに権利取得できました。 これから実機実験を行い、さらに最適化を進めていきたいと思います。 ライセンスのご案内は、こちらをご参照ください。







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